私の中で特別な記憶があって、それはもう人生で一度しかないだろうから大切に大切に何回も反芻している。
思い出を出し入れして咀嚼してるから、もうあらゆる可能性や選択肢は試して、その続きを想像して、今の私じゃない私の人生を考える。
どうしてももう一度会いたくて、破れかぶれで約束を取り付けて会ってみたけれど、
私のことを好きでも嫌いでもなくて、興味がない彼を見て、ああ私は過去の人で、この人は先に進んだんだと感じた。
私はいつもどおり緊張でごはんが喉を通らなくて、そんな私を見てつまらなそうにしていた。
ご飯を美味しそうに食べる子が好きなんだと知っていた。
私は彼のことを興味ないふりをしていつも平静を装っていたけど大好きだったから、当時の彼のことはなんでも知っているつもりだった。
本当は他の女の子と電話したり会ったりしているのを知っていたし、すごく嫌だった。
それでも大好きだから、彼の理想とする私でいたくて何にも言わなかった。2時間の遅刻にも待ってないふりをしたし、待ち合わせはいつもイヤホンして本を読んでた。
本当は数メートル前から彼が来てるのに気づいていたけど気づかないフリをしていた。
私を好きでも嫌いでもない彼と会ってから、私はひどく傷ついてしばらくはどうでもいい人と寝たりしていた。
あの日本当は、あの頃大好きだったし、これから何があっても私はあなたの味方だ、ずっと大切で好きな人だよって言いたかった。もし死にたくなる夜があれば、私のことを思い出してほしいと言いたかった。幸せになってほしいと。
そんなこと一言も言えず、その後彼は彼の見た目の良さをちゃんと活かして明るくなったようだった。
よかったなと思った。私なんかいなくても私の呪いのような祈りがなくても彼は人生を歩んでいた。
でも、今でもわたしはあの頃の繊細で壊れそうで1人で中途半端な彼が好きで、たまに夢に見る。みぞれが降っていた日に、彼の家に向かう長い電車の中でしんとした気持ちになっていた、あの日の続きを夢見てる。
彼も私と同じことを思っていて、なあんだもっと話したり遊んだりすればよかったね、これからできなかったことをしていこうか、手始めに一緒に寝てみようよ。ってところで目がさめる。